事業内容:
大阪と愛知に6院の歯科医院を展開し、各種歯科診療に最新の設備と高度な技術で幅広く対応する。訪問歯科サービスでは自宅や高齢者施設での高齢者向けの治療も提供するなど、地域に密着した医療を提供。スタッフの教育環境や働きやすさにも配慮し、質の高い医療とサービスを追求する
— 「すごい会議」の導入から6年目。どのようなビジョンに向けて問題解決を続けていらっしゃいますか。
世界から虫歯と歯周病をなくすこと、高齢者の健康寿命を実際の寿命と一致させること、広く安全な医療を提供すること。この3つが実現したいビジョンであり、その理想に近づくために「すごい会議」を導入しています。
ビジョンの実現に向けて、例えば、虫歯や歯周病をゼロにできるという研究結果をもとにした関連商品の発売を予定しており、病を未然に防ぐための「医科歯科連携」も進めています。歯科は健康な人が定期的に通う唯一の医療機関。歯科検診の機会を利用し、糖尿病や高血圧、脳梗塞、肺炎、リウマチほか、多くの病の早期発見につなげる場として機会を拡大しています。
— 6年間の「すごい会議」で、どのような成果が生まれましたか。
細かな変化は無数にありますが、大きくは3つです。
まず、最大の成果は業績の向上で、導入当初は3億円程度だった売り上げが、約10億円に伸びたこと。次に、スタッフのマネジメントが活性化し、「このクリニックの未来をどうつくるか」という全体意識で動いてくれるようになったこと。
最後に、「すごい会議」のルールや「発言フォーマット」が定着し、短時間で効果的なコミュニケーションが取れるようになったことが、うれしい変化です。
導入当初の「すごい会議」メンバーと、今のメンバーの顔ぶれが全く違う点も大きな変化ですね。会議を通して組織の目指す方向性や価値観が明確になった結果、ビジョンに賛同するメンバーが残り、彼らを軸に経営チームを構成できた。成長への安定感が生まれました。
— 松岡先生がインパクトを感じた問題解決を教えてください。
人材採用がうまくいっていることが、成長への一つのポイントです。まず、経営幹部人材の採用。
現在は分院が6院あり、院が増えるほど僕のマネジメントリスクは増えますが、そこを例えば、経営幹部5名でマネジメントできれば、リスクを1/5に分散させられます。
拡大が目的ではないものの、医療の質を向上させるには全国の歯科医院の技術を高めることが不可欠であり、それには100院あっても足りません。M&Aも進めながら分院を拡大すると同時に、マネジメント体制を強化するための経営層の採用が必須でした。
結果、人事経験のある人材と元経営者を経営メンバーとして採用できたことで、スタッフの採用もうまく回り、毎月の応募者数が以前の5〜6倍に増加しました。
人材採用は成長の肝なので、この課題を解決できたインパクトは大きいですね。
— 導入初年度はなかなか成果が出ず、試行錯誤されたと伺いました。それでも「すごい会議」を続けた理由をお聞かせください。
僕自身は、ハイパフォーマンスを上げるための仕組みや考え方、発言のフォーマットなど、「すごい会議」のあり方に、当初から効果を感じていました。ただ、他の参加者への思考のインストールに時間がかかっていた印象です。
「いい手法だ」と、感じていたために2年目も継続し、問題解決を続けたことで次第に成果が現れました。
— 松岡理事長ご自身が「すごい会議」で得た発見があれば教えてください。
発見はたくさんありますが、例えば、「発言のフォーマット」が、いいですね。提案・質問・リクエストなど、特定のフレーズを使うことでパフォーマンスが上がる実感がある。同じ話を10分かけて聞くのと3秒で聞くのとでは、効率が全く違います。
「すごい会議」の手法は、基本的にシンプルながらも3秒で伝わる発言のルールや思考の巡らせ方、問題解決の手順など、非常に考えられたノウハウだと感心します。
— 毎年、複数の「すごい会議」プロジェクトを進めていらっしゃいます。どのようにプロジェクトを設定していますか。
これまでに実施したプロジェクトは、人材採用やマネージャーの育成教育、分院別や事業別プロジェクトなど。リソースを割くことでどれほどのインパクトにつながるかを基準に、判断しています。
今後もその方針は変えずに、介護事業への注力や歯科助手の育成、フランチャイズ化の促進など、ビジョンの実現につながる課題にフォーカスしてプロジェクト化していきます。
— この6年間で手に入れた成果・変化のなかで最もうれしいもの、印象的なことをお聞かせください。
経営者目線で「患者様のために」という思考で動けるスタッフが少しずつ増え、組織を活性化できていることが組織視点でのうれしい成果です。僕の熱量が100だとすると、その下の層も80くらいまでは上がってきてくれた実感があります。
また、別の視点では、数年前に別事業に参入する機会があり、そこに挑戦すると決意したことも「すごい会議」の流れがあってこそでした。一連の経験によって価値観を180度変えるようなパラダイムシフトを体験し、自分の価値観や目指す世界観が定まった感覚があります。非常にいい経験でした。
— 「価値観を変えるパラダイムシフト」が起きる理由を、コーチの視点から教えてください。
「すごい会議」で立てる目標の源には、松岡さんのが“やりたいこと”があり、さらにその手前に、松岡さんの価値観や世界観があります。
「すごい会議」は、意思決定者の理想の実現速度を上げる仕組みなので、その価値観や世界観が研ぎ澄まされるよりも早く、そこを掘り起こして実現に向けて動く。人生を早送りして体験した結果、「やってみたら違った」「新たなものが見つかった」という検証も含め、一種のパラダイムシフトが起こるというのが僕の見立てです。
それは、その後の意思決定や目標設定にも影響を及ぼし、「本当に得たいもの」に行き着く道へとつながります。「すごい会議」は、一見すると、定量的なものを圧倒的に生みだす仕組みに見えますが、それ以上に、会社のトップが本当に大事にする核を見つける仕組みでもあります。
— 改めて、「すごい会議」を6年間継続し続けた最大の理由を教えてください。
この会議で、間違いなく人も組織も成長できる、という実感があるからです。毎年約120%成長を安定的に実現できているのは、「すごい会議」で止まることなく問題解決を続けた結果です。
ビジョンの実現に向けて多くのプロジェクトを動かしている今、マネジメントに一貫性を持ち、ベクトルをそろえて進む必要がある。参加者が多い会議ほど認識にズレが生じやすいので、リーダーの意識を統一して進めてくれる梨木さんの存在が欠かせません。
— この6年間で「すごい会議」が組織に定着したとすると、今、コーチが果たす役割はなんですか。
「すごい会議」は文化として根付いたものの、梨木さんがいないとうまくワークしない感覚があります。特に、10人以上が集うセッションではそれが顕著で、コーチが参加者の意見を引き出して進めてくれるからこそ効果的に議論できる。
梨木さんの魅力は、成果に導く能力の高さはもちろん、当院を心から大切に思ってくれていると、その所作からも感じさせてくれる点です。当院は「三方よし」や「患者様のために」ということを念頭において活動しているので、その思いを同じように体現できる梨木さんの誠実さが文化にマッチしています。
— 梨木コーチは、どのような経営者の方に合う、と感じますか。
理念経営型の経営者ですね。梨木さんは僕の描く世界観を理解してプロジェクトを進めてくれるので、理念経営を進めたい経営者にはやりやすいはず。色合いが似ている人でないと、コーチも経営者も、お互いに才能を発揮しにくいんじゃないかな。
その点で、僕と梨木さんはタイプが似ているので、梨木さんに嫌な感覚を感じたことは一度もないですね。目標達成するための厳しいコーチングも魅力の一つです。
— ずばり、いつまで「すごい会議」を続けますか。
最終的に目指すのは、梨木さんに会議に入ってもらうことで僕がいなくても大きな成果が出せる状態をつくること。
そこへのステップとして、今期は初めて、僕が参加しないセッションを試験的に始めました。今後はそういった機会を増やしながら意思決定を他の経営陣に任せ、僕は空いた時間で新たな何かを考えることにリソースを使いたい。
その状態をつくるためなら、この先5年でも10年でも「すごい会議」を継続します。
— 「意思決定者」を育てる場としての「すごい会議」。どんな手応えを感じていますか。
僕が言うには、「すごい会議」は組織をマネジメントするための仕組みです。一人の人間ができることには限りがあるので、同じ視点で動ける人材を増やせることに価値がある。
試験的に始めたセッションでは副理事長が意思決定者を務めていて、彼の今後の成長の可能性を感じています。行動量を増やすことが成長につながるとすると、PDCAを回す仕組みのある「すごい会議」は、人材育成に効果的です。
— 最後に、ビジョン実現への道のりとして、何%満足していますか。
80〜90%ですね。結果はもちろん大切ですが、僕としては、達成する瞬間以上に長い時間のかかるプロセスそのものを楽しみたい。本来は、目標を立てずに興味のまま進む方が僕には合っているので、過程を楽しめることは強みであり、現に、今この瞬間も満足しています。
経営者としてハードな瞬間はもちろんありますが、すべてはいい経験。きつい瞬間も結局は楽しい。これからも問題解決を続けます。
— ありがとうございました。
( 取材日:2024年7月10日、場所:医療法人 百花繚乱、インタビュアー:渡辺恵)
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