CASE STUDY

「力を貸してほしい」から始まった、成長の加速。
“みんなで”創るクリニックの未来
「力を貸してほしい」から始まった、成長の加速。“みんなで”創るクリニックの未来

医療法人社団 メディーノ
しおや消化器内科クリニック
院長
塩屋 雄史

事業内容:

内科一般から消化器全般、生活習慣病等の診断・治療が可能な、さいたま市のクリニック。さいたま赤十字病院からは消化器内科、リウマチ科、呼吸器内科、外科などの専門医が非常勤医師として在籍し、最新の検査設備も装備。地域の「かかりつけ医」として診療所の運営に留まらず、地域住人の人生に寄り添う構想を実現中。


課題: 事業拡大成長
規模: 10名〜30名
業界: 医療クリニック業界

“あの人”が「スゲエ」って言うなら、やってみたい

— いしがみ整形外科クリニックの石神院長がFacebookに投稿した記事が、導入のきっかけになったとお聞きしました。

( 塩屋 )

石神先生とは開業医の経営塾が同じで、ある日突然「なんかスゲエのあるけど、みんな興味ない?」といった内容の投稿をされていたんです(笑)。石神先生のクリニックは開業から短期間ですごい数の患者さんが来ていると聞き、これは間違いないと思って連絡しました。

— 実際にマネジメントコーチの話を聞いて、何が心に残りましたか。

( 塩屋 )

湘南美容外科クリニックの相川院長の案件ですね。湘南さんが急成長するタイミングでこの会議が関わっていたというエピソードを聞き、普通の会議とは違う、成長曲線の角度を上げる何かがあるんだろうと感じました。

スタッフを巻き込みたいのに、できないジレンマを打破したい

— その上で、どんなことを手に入れたくて導入を決めましたか。

( 塩屋 )

開業以来、順調に伸びてはいたのですが、1日に診られる患者数のキャパシティを考えると、『まだできる』という思いがありました。地域に根ざした「かかりつけ医」として目指したい次の展開もあり、まずはクリニックの成長を高い水準で安定させたかった。

ただ、僕独りでは加速させるには限界を感じていて、もっとスタッフを巻き込んでいきたかったんです。

— スタッフの方を巻き込め切れない難しさを、どう実感していましたか。

( 塩屋 )

僕だけが勉強会や研修に行ってやる気になっても、スタッフは「また始まった…」という反応。同じ熱量に持っていけないジレンマを感じていました。

でも「すごい会議」をやれば、自動的に幹部メンバーを巻き込める。僕1人では1つのアイデアしか出なくても、3人に増えれば3倍に、5人なら5倍のアイデアが生まれるイメージが湧きました。

「クリニックのために何かしたい」とスタッフが本気で思ってくれる

— 2019年6月の導入から、コロナ禍でセッション停止の期間を経て約2年間。どのような成果や変化が手に入りましたか。

( 塩屋 )

まず大きくは2つです。

① 幹部メンバーが自主的にクリニックのことを考えてくれるようになったこと
② 何に対しても「どのようにすればできるか」と考えるようになったこと

— “①幹部メンバーがクリニックのことを考えてくれる”とは、メンバーを巻き込めた結果と言えそうですね。

( 塩屋 )

これは一番嬉しい変化です。メンバーが以前より真剣にクリニックのことを考えてくれていて、「こうしたい」というメールが業務時間外でも来たり、以前より自主性が生まれた実感があります。

テーマに沿って“みんなで考える”ことをセッションで繰り返してきたので、責任感も出たのかもしれません。1人でやるのと10人でやるのは全く違う。巻き込めている実感があります。だからコロナ禍でも数字が上がったんじゃないかな。

— 何をきっかけに、メンバーはクリニックのことを自主的に考えてくれるようになったのでしょうか。

D 梨木 )

初回セッションの冒頭で、院長が「今まで独りでやってきたけど、このままだと次に行けないからみんなの力を貸して欲しい。」と仰ったんです。僕は院長のその言葉で場の空気が変わり、みなさんの目の力が増したように感じました。

患者数を増やす取組みにしても、現場の仕事が増えることを考えると反対が出てもおかしくない。けれど抵抗なく実行に移れたのは、「クリニックのために何かしたい」という想いがみなさんの中に既にあったから。先生の言葉をトリガーに種が芽吹いたと感じています。

( 塩屋 )

確かに、改まって時間をとって「力を貸してほしい」という言い方をしたことはなかったかもしれないですね。

あと、さまざまな取り組みで患者さんが喜んでくれる体験をしたことで、「クリニックを繁栄させることは、患者さんにとって良いことであり、自分たちの幸せにも繋がる」と実感してくれたのかもしれません。動きたくなる動機が生まれたのだと思います。

— スタッフの方と共に進む中で、先生ご自身のコミュニケーションはどう変化しましたか。

( 塩屋 )

みんなに動いてもらうにはどうすればいいか、を考えるようになりました。

「先生が今後どうしていきたいのか分からない」とスタッフに言われたことがあって。自分では伝えているつもりでも、もっとお互いの理解を深めないとダメだと思ったんです。

以来、敢えて「力を貸して」と言葉にするようにしていますし、密に話すようにしています。面談の時に趣味を聞いたり、何をされると嬉しくて何をされると嫌なのか、個別にアンケートを取ったり(笑)。まずは知ろうとすることからですね。

自主性+「どのようにすればできるか」=患者数125%増の成果

— “②何に対しても「どのようにすればできるか」と考える”と、どんな変化がありましたか。

( 塩屋 )

以前は簡単に「無理です」と口にしていたのが、今では「じゃあ、どうすれば無理じゃなくなる?」と誰かが自然に問いかけているんです。「どのようにすればできるか」というフレーズを使い続けたことで、問題解決思考が定着したんですね。

物事を進めるスピードも上がり、僕がいなくても勝手に解決に向けて進めてくれます。幹部メンバーは特に「どのようにすれば〜」が口癖になっていて、家でも言っているとか(笑)。

— 定量的な数字面では、どんな成果が出ましたか。

( 塩屋 )

1日の来院患者数が125%増加し、新規患者数も120%前後増加しました。

そもそもコロナ禍では来院者数が落ちているクリニックが多いんです。その中で当院は、以前の80〜90名/日から現在は平均100名を超え、130〜140名/日と増加しています。新規の患者数を増やすことは更に難しいのですが、それも以前の10名弱/日から2桁以上に増えていて、「すごい会議」は数値的な成果の改善には抜群に良いと実感しました。

— 具体的に、どのような方法で来院数を増やすことができたのでしょうか。

( 塩屋 )

セッションで、解決したいテーマを患者数や新規患者数に設定し、「どうすれば増やせるか?」ということをみんなで考える。その解決策としてチラシを工夫したり、あらゆるアイデアを実行していった結果です。

このテーマが落ち着いたら次、というように、梨木さんが次々に提案してくれたのがよかったですね。自動的に売上も上がり、行動しただけの手応えがありました。

— 来院数増加につながった、クリニックの特徴や強みを教えてください。

( 塩屋 )

専門性を高めています。一般的に、診療所では専門医の不在や検査機器の不足などで診断がつけられず、総合病院に行っていただくことも多いのが事実。でも、それでは総合病院の患者が増え過ぎる傾向があり、患者さんにも病院にも良くない。だからこそ当院でも診断をつけ、担当できる患者さんは担当していけるよう専門性を高めています。

さいたま赤十字病院との連携も強化しているので、状況に応じた紹介や双方の病院の行き来がスムーズです。僕は赤十字病院で外来を担当しているし、赤十字病院の医師は、消化器内科、リウマチ科、呼吸器内科、外科などから非常勤としてこのクリニックに在籍してくれています。

反対意見も進化へのプロセス。一緒に進める人が見えてくる

— 導入によって「変化」が生まれたことで、スタッフの方からの反発はありませんでしたか。

D 梨木 )

序盤でしっかり揉めましたね(笑)。何かを変えようとすると強いストレスがかかるので、当然起こり得ます。最初の会議は10時間かかりますし、ルールも多い。僕の未熟さもあり、コーチである僕の存在に抵抗感を抱かれた方もいました。

そこは塩屋さんに相談させていただき、僕自身も丁寧なコミュニケーション心がけて改善を目指しました。以降、成果を実感していただいてからは、むしろ強い味方としてストイックに取り組んでいただけた実感があります。

( 塩屋 )

僕がスタッフに言っていたのは、利益を追求したいわけではなく「患者さんにとって良いことをするために必要」だということです。そして実際に結果が出るということは、正しいと。成果に応じて還元する制度も整えました。

変化に対して、人によって温度差が出るのも仕方がないし、その結果として離職する方が出ること自体は悪いことではないと思っています。進化するからこそ、同じレールに乗れる人とそうでない人が出てくる。その結果、「僕たちのクリニックを育てたい」と思ってくれる人が残ってくれればいいんです。

事業拡大への「起点」をつくる会議とコーチ

— 皆さんの自主性を更に促すような取組みがあれば、教えてください。

( 塩屋 )

クリニックを良くするための取り組みを、僕抜きで考えて進めてもらっています。僕は報告を受けて意思決定もしますが、基本はお任せ。例えば患者さんへの催し物や、コロナ禍でのSNSの活用など、毎週定期的にミーティングをして自分達で進めてくれます。

プロジェクトを進める力が全体的に上がりましたし、みんなに任せれば僕は次のことに取り掛かれる。良いことしかないです。

— 「すごい会議」が果たす機能とは、何だと思われますか。

( 塩屋 )

事業拡大を加速するための起点、ですね。当院の場合は、みんながクリニックのことを考え始めたことが起点でした。

働く理由がお金だけでなく、仕事そのものに喜びややりがいを感じ、このクリニックに価値があると感じる。みんなが職場を前よりも好きになってくれているんじゃないかな。

— 梨木コーチの価値を実感するのは、どんな場面でしたか。

( 塩屋 )

問題を定義するのがとても上手いんです。僕からは問題が見えていなくても、会話する中で「問題ってこれじゃないですか」「この問題を解くとここまで行けますね」と、整理して問題を見えやすくしてくれる。そうやって次々にテーマを指し示してくれたから、最後までついていけたし、成長に必要な問題解決をし続けられたのだと思います。

点から線へ。人生の転機に合わせたサポートで寄り添う

— 今後の塩屋院長のビジョンをお聞かせください。

( 塩屋 )

クリニックを核として、皆さんの人生に寄り添い一生サポートできる構造をつくりたいと思っています。

例えば、病気を未然に防ぎ早期発見に役立てるための健診センターの設立。健康促進・改善のためのトレーニングジムの開始。そして、病気発見時にスムーズに対応できるクリニックの専門性拡充と連携強化。最終的には、看取りへのサポートとしての葬儀施設まで。

誰もが辿る生老病死の道筋を、患者さんやそのご家族にとって最大限負荷なく、良い時間を長く過ごしていただけるような総合施設に整えていきたいと思っています。

まず、直近ではジムの運営を開始します。健康のために運動した方がいいと分かってはいても、メタボな自分を見られるのが恥ずかしくてジムに行けないと言う人が相当数いるので、ジムに行くためのジムを作りました(笑)。それでメタボが改善して、クリニックを卒業して貰えたらそれが一番。

卒業できるクリニック、いいでしょ。

— ありがとうございました。

( 2021年4月)


               

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