事業内容:
整形外科を専門とし、骨折、脱臼、捻挫、関節炎、腰痛、スポーツ障害などの治療で地域医療を担う存在。専門医による個別対応を重視すると共に最新の医療技術と設備環境でリハビリや物理療法を活用し、患者の機能回復をサポートする
— 2023年の導入から約10カ月が経ちました。導入の経緯からお聞かせください。
いしがみ整形外科クリニックの石神先生にご紹介いただいたことがきっかけです。石神先生とは大学の同級生で、ロケットスタートで起業に成功する姿を目の当たりにしてきました。
地域の患者さんに頼られ、スタッフに仕事のやりがいや豊かさを提供できている上に教育体制も完璧で経営も順調。まさに“三方よし”を実現する姿がうらやましく、「自分もそうなりたい、同期のライバルとして追いつきたい」という思いで、彼に相談しました。
当時、僕が感じていた課題は、クリニックの「チーム力」「実行力」「売り上げ」の三点で、そこへの効果的な解決策を彼に尋ねるたところ、「すごい会議」を薦められたんです。
石神先生が言うなら間違いない。すぐに梨木さんを紹介してもらいました。
— まず、どのような目標を立てましたか。
クリニックの成長に向け、新規来院患者数の増加を目標にしました。売り上げアップを掲げる方がわかりやすいとも考えましたが、僕が言うには、新規の患者数を増やす方が、より難しい。スタート時の熱量の高いタイミングに、あえてチャレンジングな目標を選びました。
また、始める前に予感したのは、この会議で一番成長するであろう人物は、僕自身だということ。経営が思うようにいかなかったのは、僕の甘さや弱さが原因。厳しさは覚悟の上で難易度の高い指標を選択し、「誰より成長する」と、自分自身に誓いました。
— 難易度の高い目標を掲げたことに対し、幹部メンバーの方の反応はいかがでしたか。
最初は“やらされている感”もあったと思います。長時間の会議に慣れない上に、会議は休診時間に実施するので、彼らの負荷は大きい。
しかし、途中からは僕以上に積極的に問題と向き合い、プロジェクトをマネジメントしてくれるようになりました。
僕と同じく、スタッフにも甘さがあったことは事実。その点も含めてお互いに指摘できるようになったことが大きな変化です。
— 具体的にどのような成果が生まれましたか。
まず、導入前と比べて売り上げが140%伸びました。課題に対して解決策を実行し、数値と期日を定めて毎週の進捗会議で状況をチェックする。PDCAを回す「実行力」の高まりが数字に現れました。
同時に、「チーム力」の向上も期待以上です。目標を定めてチームで達成を目指すという基盤の上に「提案」や「リクエスト」などの発言の「型」があることで、スタッフからも積極的に意見が出る。
僕には思いつかないようなアイデアの数々で、チームとしての総合力が高まりました。
— 阿部院長にとって、最もうれしい成果をお聞かせください。
スタッフありきのクリニックなので、やはり「チーム力」の向上ですね。幹部メンバーのベクトルがそろってこそ、チャレンジングな目標を目指せる。達成に向けて「やることをしっかりやろう」と、認識を共有できました。
スタッフが前向きに取り組むいい雰囲気が患者さんに伝わり、その信頼が売り上げにも結びついているんじゃないかな。
— コーチは、このチームの素晴らしさをどのように実感しますか。
チームによって問題の内容や状況は違いますが、問題に取り組む雰囲気が、“うまくいくチーム”と“そうでないチーム”では大きく違います。その点で、このチームは“うまくいくチーム”だと直感しました。
その理由の一つが、クリニックのNo.2と言える幹部の方と阿部先生のコンビネーションのよさ、です。阿部先生の意図を汲み取り、議題をうまくテーブルに挙げてくれる方がいることで問題解決がスムーズに進む。チャレンジングな目標さえ“うまくいく”と信じられる雰囲気を生みだしてくれる存在は、チームの大きな資産です。
— 改めて、チームのポテンシャルを引き出して成果につなげるにあたって、「すごい会議」はどのように貢献できましたか。
梨木さんの存在が大きいですね。その人柄や石神先生からの絶大な信頼、ファシリテーターとしての能力の高さ。梨木さんだからお願いしたいと思いました。
梨木さんの誘導のもと、僕たちの状況に合わせてPDCAを回していける点に魅力を感じています。
— 特に効果を感じたセッションのエピソードをお聞かせください。
組織や自分自身の「ひどい真実」を各自が口にする場面です。最初は僕も発言をためらいましたが、流れに沿って「真実」を挙げるうちに、会議以外の場でも言うべきことをしっかり言い、やるべきことをやる、というあり方が自然と根付きました。
以前は、『もしかして間違えているかも』と、不安を感じながら進めていたような案件も、早めに相談できるので修正が効きやすく、問題が深刻化する前にアプローチできています。
本音のコミュニケーションが増え、間違っていることは「間違っている」と、僕に対してスタッフからフィードバックをもらえるようになったこともうれしいですね。コミュニケーションが増え、率直に意見を言い合う文化ができました。
— 「ひどい真実」という、発言がためらわれるようなテーマでも「すごい会議」だと話し合えるのは、なぜでしょうか。
梨木さんという中立的な立場の人が、場をうまくコントロールしてくれるからでしょうね。そうでなければ、口にする方も聞く方も感情的になってしまう。冷静さを保ちながらも本音を出せるのは、コーチの存在があってこそです。
— 「キツいこともあるけど伸びる」のが「すごい会議」だとすると、どのようなキツさを体験しましたか。
例えば、時間管理とタスク管理。今までにない高い目標を目指す以上、全員のタスクが増えることは間違いありません。僕は仕事も経営ものんびりとやってきた方なので、明確に期限を区切ってタスクを遂行するのは実は苦手なんです。
自分のクリニックだからこそ、何もしなくても誰にも怒られないとはいえ、成長するクリニックとそうでないクリニックの違いはそこにある。必ずやり切る、と決めました。
ただ、僕はスポーツが好きでストイックに追い込む状態が嫌いではない一方で、メンバーがそれに耐えられるかどうかは懸念でしたが、実際は僕以上に頑張ってくれて、チームとして全員で成長できています。
— スタッフの方が前向きに頑張る様子を、どのような行動から感じますか。
導入から数カ月が経った頃、幹部の方から「私たちはもっと知りたい」という声が挙がりました。例えば、クリニックの売上利益の実態や今後の経営のビジョンについて、阿部先生がどこを目指したいかという未来について。
『今のコミュニケーションでは足りない』という、前向きなニーズであり、彼らが役職以上の視座を持って同じ船に乗ってくれている、非常にいい傾向に感じました。
この取り組みが、何より患者さんにとっていいことになる、と捉えてくれたことは間違いないですね。
KPIや数字を置いてPDCAを繰り返すうちに自然と視座が上がり、経営を自分ごととして捉えてくれるようになった。目標達成を目指す上で、「もっとこうした方がいい」「コストを知っておきたい」など、積極的な声が聞こえてきます。
— このチームの「変化」のきっかけがあればお聞かせください。
あくまで僕の観点ですが、会議メンバーを変更したことが一つのきっかけになった印象があります。プロジェクトの成功の秘訣は、「やり方が見えなくても信じて前進する。プロセスを変え続けて達成を目指す」と、合意できたメンバーで進むことにある。
僕には、その方が同じ船に乗っているようには感じられず、その点をお伝えしたところ、阿部先生がメンバー変更を意思決定されました。「目標達成への選択をする」という明確な意思表示であり、必要な決定だったと思います。
僕や他のスタッフも彼について感じるところがあったので、梨木さんからの助言がなくとも、いずれ同じ結論に至っていたはずです。現在は、彼も会議の外から積極的に協力してくれていることがうれしいですね。
この一連の体験も、僕たちに必要なプロセスでした。
— 医療関係者で「すごい会議」を実施する場合、医療とビジネスのはざまでスタッフの感情が追いつかず、プロジェクトが難航するケースがあります。このチームがスムーズに進めた要因はどこにありそうですか。
人材研修などの学びの機会が豊富にあることが、一つの要因かもしれません。患者さんとの“絆”を結ぶ対価が売り上げである、という考えを現場のみなさんが理解されていることで、医療と数字が違和感なくつながる。結果、売り上げアップを目指すことへの違和感もなく、スムーズに進んだように感じました。
— 導入時の期待に対して、現状の満足度は何点ですか。
100点と言っていいと思います。まだコーチングも必要ですし、変えなければいけないことも多々ある。一方で、『こうなってほしい』と僕が思う状態に走り出せているので、継続的に成果を出せるかどうかは僕たちの努力次第。
「すごい会議」を続ければ成長の可能性を広げられる、と確信しています。僕はもちろんメンバーも、この会議を「続けたい」と言うと思いますよ。
— 100点超えの満足度を目指すとした場合、何が手に入れば200点になりますか。
設定した目標がしっかり達成できる、という体験ですね。まだ目標達成には至っていないので、達成して自信をつけたいところです。
チャレンジし続けることが僕の人生の幸せであり、何歳になっても成長を諦めたくない。もちろん、スタッフが幸せでなくては意味がないので、彼らとの対話をさらに丁寧に、相互理解を深めながらチャレンジの度合いを見極めていきます。
— 今後の貴院のビジョンをお聞かせください。
究極としては、来院いただく患者さんの不調や不安を取り除いて安心を提供し、すべての患者さんの希望を叶えることを目指しています。同時に、スタッフの幸せを実現し、この地域やその範囲を超えたNo.1の整形外科になれるよう活動していきます。
未来に向けて、自分たちを磨くべく技術やあり方を学び続けるのみ。梨木さんには引き続き、客観的かつ遠慮のないフィードバックをお願いします。
— ありがとうございました。
( 取材日:2024年3月2日、場所:阿部整形外科クリニック、インタビュアー:渡辺恵)
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